読み書きのみの学習困難
読み書きのみの学習困難
(ディスレキシア)への対応策
ライフサイエンス・医療ユニット 石井 加代子
1.はじめに
脳の研究が進むにつれ、ヒトに普遍的に備わる機能の解明とともに、個々人の機能の多様性を解析する事も可能になりつつある。総じて健常な脳機能を有し、自立して生活することの出来る人々にも、特定の作業が困難で他の人に比べて多大な努力を要する事があり、このために不利な状況に陥る危険性がある、という捉え方が広まっている。小学校の教室を思い返した時、普段会話をしているときは流暢に話す事が出来、発想が豊かであるにも関わらず、教科書を音読するように指名された途端しどろもどろになったり、内容に関する質問になかなか答えられなくなったりする級友が居た事に思い当たる人も少なくないはずである。中学以降での英語の音読でも然り。年齢とともに、音読することを求められる機会は減るが、このような児童・生徒や学生の多くは発達性難読症(Developmental Dyslexia、本稿では以下ディスレキシアと略す)を有す可能性があり、文章の読み書きが遅く、読み間違いや飛ばし読み、綴り違いが多いという困難が一生続いている。黙読も含め文章の読み書きは、学校教育や多くの職場での作業、職能向上に重要な地位を占めているため、他の能力が正常或は優秀であっても、読み書き障害ゆえに、その才能を発揮し促進する機会を失う危険性がある。又、このように自分の才能を活かせず、周囲から才能や意欲が無いと誤解される事が、自信喪失・不安・重圧・疎外感につながり、心身症や学校・社会からの離脱を引き起こす可能性も指摘されている。 児童が初等教育を開始する際、読み書き障害を早期に発見し、適切な時期に必要な処置を施すことにより、出来得る限り通常の教育環境で学習し、持てる能力を伸ばし、満足のゆく生活を送る事が出来るように支援する体制を整える必要がある。そのため、(1)早急にディスレキシアの日本に於ける現状調査を実施し、(2)原因、症例、精度・感度の高い早期診断方法に関する研究や、障害を持つ人々を支援する体制・教材に関する研究開発を推進する必要がある。

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